IRONMANは、スイム3.8km、バイク180km、ラン42.195km、合計約226kmを進むトライアスロンです。完走するだけでも大きな挑戦とされるこの競技で、IRONMAN公式レースにおける最速記録を持つのが、ノルウェーのクリスティアン・ブルンメンフェルト選手です。
ブルンメンフェルトは、東京2020オリンピックの男子トライアスロンで金メダルを獲得した選手です。オリンピックのトライアスロンは、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmで行われるため、IRONMANとは距離もレースの性質も大きく異なります。それでも彼は、オリンピックの距離で世界の頂点に立ったあと、IRONMANという長距離の世界でも圧倒的な記録を残しました。
その舞台となったのが、2021年11月21日にメキシコで開催されたIRONMAN Cozumelです。ブルンメンフェルト選手はこのレースで、7時間21分12秒という驚異的なタイムを記録しました。これはギネスワールドレコーズにも、男子のIRONMAN最速記録として掲載されています。
各種目のタイムは、スイム39分41秒、バイク4時間02分35秒、ラン2時間35分24秒。普通にフルマラソンだけを走っても驚異的なタイムですが、それをIRONMANの最後に2時間35分24秒を出しているところに、トップ選手の驚異的な実力があります。
舞台となったコスメルは、メキシコ東部のカリブ海に浮かぶ島です。多くのダイビングスポットがあり、クルーズ船の寄港地としても知られるメキシコ屈指の観光地です。コースは小高い山がほとんどないフラット基調で、バイクの最大高低差は約20m、ランは10m以下とされる高速レース向きのレイアウト。ブルンメンフェルト選手はそのコース特性を味方につけ、持ち前のスピードとパワーを最大限に引き出してフィニッシュしました。
この記録が特別なのは、単にタイムが速いからだけではありません。ブルンメンフェルト選手にとって、このIRONMAN CozumelはフルディスタンスのIRONMAN初挑戦でした。初めてのIRONMANで世界最速記録を叩き出したという点でも、彼の能力の高さが際立っています。
IRONMANでは、スイム、バイク、ランのどれか一つが得意なだけでは勝てません。長時間にわたって高い出力を維持しながら、補給、暑さ、疲労、集中力をすべてコントロールする必要があります。特に最後のランでは、それまでの疲労が一気に表れます。その状況で2時間35分台のマラソンを刻めること自体が、まさに世界トップの証明です。
東京オリンピック金メダリストが、IRONMANでも最速記録を打ち立てた。クリスティアン・ブルンメンフェルト選手の走りは、IRONMANという競技がただ長いだけではなく、スピード、持久力、戦略、精神力のすべてが求められるスポーツであることを示しています。
226kmをどれだけ速く進めるのか。ブルンメンフェルト選手の7時間21分12秒という記録は、人間の持久力の限界に迫る、IRONMANを象徴する記録の一つです。

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