ついに、あの真っ赤なレッドカーペットを踏みしめました。 IRONMANみなみ北海道。私たち3人、無事に全員で「IRONMAN」の称号を手にすることができました!
挑戦の最初は「海で溺れないかな…」なんて低レベルな心配をしていた私たちが、まさか本当に鉄人になれるとは。今回は5泊もの遠征で書きたいことが山ほどあるのですが、まずはこの死闘の記録として、私「TYO」の目線から振り返る【レース当日編】を残しておこうと思います。
午前2時、非日常の幕開け
IRONMANの朝は異常に早いです。スタートは6時30分なのに、起床はなんと午前2時。4時間半前起きなんて早すぎると思うかもしれませんが、実は全く余裕がありません。 起きてすぐシャワーを浴び、この日最後の「まともな食事」を胃に詰め込みます。トライスーツに身を包み、ウェットスーツやゴーグル、バイクの空気入れを抱えて、3時45分にはホテルを出発。4時発の選手専用バスで、決戦の地・上磯漁港へ向かいます。
会場に着いたら、愛車の最終チェック。ここでMag Onのジェル(レモン&梅味推し!)を大量に積み込みましたが、後から思えば成分が偏りすぎていました。次への反省点です。 そして直前あるあるですが、ウェットスーツを着る前にトイレに行こうとしたら、なんと100人以上の長蛇の列!「みんな考えることは同じか…」と潔く諦め、首にたっぷりとワセリンを塗り込みました。以前、伊東の海で首の皮が剥ける激痛を味わったので、ここだけは絶対に忘れません。
波乱なし!?まさかのスイム自己ベスト
スイムコースは200m付近まで足がつく浅瀬。波も穏やかで、水温もひんやりして気持ちいい最高のコンディションでした。 過去の大会では、周りのペースに飲まれて力み、自滅することが多かった私。今回は「ゆっくり、落ち着いて」を胸に泳ぎ始めました。するとどうでしょう。リラックスした結果、1周目(1900m)を自己最高の42分で通過!息も上がらず、1300人の大集団のおかげでヘッドアップ(前を向いて方向確認すること)をサボっても真っ直ぐ泳げました。 結果、3800mを87分台でフィニッシュ。まさかの自己ベスト更新で、最高のスタートを切りました。

絶望の180kmバイク
意気揚々とバイク(180km)に乗り込み、最初の30kmは時速30kmペースで快調に飛ばしました。「いけるぞ!」と思ったのも束の間、木古内から函館へ戻る15kmの上り坂と強烈な向かい風が牙を剥きます。 私のこれまでの最長走行距離は80km。スイムばかり練習していたツケが、100km地点で一気に回ってきました。太ももは攣り、ふくらはぎは乳酸でパンパン。首も腰も悲鳴を上げ、「あと80kmもあるの…?」と絶望の淵に立たされました。一度上り坂の途中で止まったら二度と漕ぎ出せないのではないかという恐怖と戦いながら、ただひたすらペダルを回します。 100km地点からの唯一の希望は、補給でもらえる「IRONMANロゴ入りボトル」。「絶対これを持って帰るんだ」という執念だけで進みました。終盤、計4回も登らされる北斗茂辺地ICの激坂(特に160km地点!)は、本当に心が折れかけましたが、意地と根性で180kmを7時間17分で走破。目標の6時間には遠く及ばず、己の実力不足を痛感する時間となりました。

トランジション(T2)の悲劇
バイクからランへの着替え(T2)で、私は重大なミスを犯しました。 疲労困憊の体にカフェインと糖分をぶち込もうと、ギアバッグにレッドブルとコーラを忍ばせていたのです。しかし、T2に着いた瞬間、猛烈な尿意が。トイレはT2の出口にしかなく、ドリンクをゆっくり飲む余裕なんてありませんでした。バイク中もずっと我慢していたため、せっかくのレッドブルはお預け。ランの道中で受け取れるパーソナルニーズバッグに入れておけば…と激しく後悔しました。
極限のフルマラソン、そして心を打つ出会い
180km漕いでボロボロの状態で、フルマラソン(42.195km)がスタート。 絶対走れないと思っていましたが、アドレナリンの魔法と、2.5kmごとのエイドで提供される「コーラとじゃがりこ」のおかげで、序盤は楽しく走れました。森と牧場に囲まれた木古内の景色も新鮮です。
15km地点で足が攣ってしまった時、後ろから猛スピードで走ってきた外国人選手が「You need Salt?」と塩カプセルをくれました。おそらく彼はサブ10(10時間切り)レベルのトップアスリート。極限状態でも他者を気遣える余裕と懐の深さに、ただただリスペクトです。地元の方々の温かい応援や、すれ違う完走者たちの姿にも大きな力をもらいました。

しかし20kmを過ぎた頃、ついに限界が訪れます。急な立ち眩み。すでに12時間以上動き続けている体は悲鳴を上げていました。「とにかく完走第一」と割り切り、そこからは歩いてゴールを目指すことに。 日が落ちた北海道の夜は容赦なく冷え込みます。街灯のない真っ暗な道の中、汗冷えで凍えそうになりましたが、28km地点に用意していた上着に救われました。(事前に聞いていた熊が出なくて本当によかったです…!)
歩いている途中、義足の選手と数キロご一緒しました。 片足で3800mを70分で泳ぎ、義足で180kmを漕ぎ抜いてきたというその方は、なんと25km地点まで私より前を走っていたのです。とてつもないハンデを越えるための想像を絶する練習量、そして気高い精神力。彼とビジネスやトライアスロンの話をしながら歩いた時間は、私に「もっと練習しよう」という強烈なモチベーションを与えてくれました。
15時間1分の歓喜
残り3km。時刻はすでに21時を回っていましたが、沿道にはまだ応援してくれる方々が、エイドにはボランティアの方々が待ってくれていました。 時計を見ると、タイムは14時間40分。なんとか14時間台でゴールしたい!寒さで固まった重い体を引きずり、最後の力を振り絞って走り出しました。正直、この3kmの記憶は「ただただキツかった」ということしかありません。
そして、視界に飛び込んできたレッドカーペット。 何度もYouTubeで見て憧れ続けたあの場所です。疲れなんて一瞬で吹き飛びました。どんなポーズをとるかなんて考えていませんでしたが、気づけば自然と両手を高く突き上げていました。 タイムは15時間1分。14時間台にはわずか1分届きませんでしたが、15時間の苦しみがすべて報われた瞬間でした。

首にかけられたフィニッシャーメダル、タオル、シャツ。そのすべてが最高に嬉しかったです。

実力不足を痛感したバイク。トップ選手たちから受けた刺激。そして、スポーツでしか味わえない究極の達成感。 あんなに苦しかったのに、なぜか「もっと強くなって、またやりたい」と思っている自分がいます。次はバイク180km、絶対に6時間切りたいと思います!

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